2017/04
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百人一首 58♪
ありまやま ゐな ささはら かぜ ふ
有馬山 猪名の笹原 風吹けば
     ひと  わす
いでそよ人を 忘れやはする (大弐三位 だいにのさんみ)



『 読み方 』
アリマヤマ イナノササハラ カゼフケバ 
イデソヨヒトオ ワスレヤワスル

『 現代語訳 』
「有馬山に近い猪名の笹原に風が吹くと、そよそよと音をたてます。
さあ、それですよ、あなたのことを私が忘れたりするはずがありません。」

※有馬山・・・神戸市兵庫区有馬町にある山。温泉地としても有名。
※猪名の笹原・・・「猪名」は尼崎市猪名川町付近の平地。京から有馬に行く途中にあり、昔は一面の笹原だったという。
※風吹けば・・・風が吹くこと。ここまでが、「いでそよ」の「そよ」を導く序詞となっている。
※いで・・・勧誘・決意・反発などの場合に用いる感動詞。「さあ」などと訳す。
※そよ・・・笹の葉音の「そよそよ」に、「それですよ」の意を掛ける。前者は擬音語の「そよ」。後者は代名詞「そ」に助詞の「よ」が添ったもの。
※人・・・相手の男をさす。
※忘れやはする・・・忘れるか、いや忘れるはずがない。「やは」は反語。

紫式部のひとり娘、大弐三位が詠んだ歌
『後撰和歌集』の詞書には、「離(か)れ離(が)れなる男の、おぼつかなくなど言ひたるに詠める」とあります。

離れ離れなる男の(あまり通って来なくなった男が)
「離れ離れなり」という言葉は、男女が疎遠になることをいいます。

「おぼつかなく」など言ひたるに詠める。
(「気がかりです」などといったので詠んだ歌)
「おぼつかなし」は「気がかり」だという意味。
「君が浮気をしているのではないかと思うと気がかりだ」というのですね。
自分が来ないくせに勝手なものです。
大弐三位もむっとしたことでしょう。

以上のようないきさつで詠まれたのが、この歌です。
「有馬山 猪名の笹原 風吹けば」までが序詞ですから、とりあえずこの部分をはずし、作者の言いたいことを明確にしてみましょう。
いでそよ人を忘れやはする
(さあそれですよ!あなたを忘れたりするものですか!)
「そよ」は「それよ」というのと同じです。
「それ」が受けているのは、男の言ってきた「おぼつかなし(気がかりだ)」という言葉。
冗談じゃない、浮気が気がかりなのは私のほうですよ、と。
「人を忘れやはする」というのは反語なので、かなり強い語気になります。
私があなたを忘れるはずがないではないか、という感じです。
身勝手なことを言ってくる男に、巧妙な技巧を使ってきっぱりと言い返しているわけですね。

また、この歌は序詞も優れております。
まやま いささはら ぜふけ
あ段の音が多く、その美しい韻律(いんりつ)が「いでそよひとを 忘れやはする」という主想部の強気な内容をやさしく包みこんでいます。

そして、序詞に描かれる風景。
猪名の笹原に風がわたり、そよそよと葉ずれの音がするというのは、まことにさびしい。
作者の心象風景も印象づけております。

強がりを言っても、私はあなたから離れるとさびしいわ
という矛盾した女心を序詞でかたちにしていて、見事な歌ですね。



『 作者について 』

大弐三位 (999~?)

紫式部の娘、藤原賢子(かたこ)。
父は宣孝。
はじめ中宮彰子に仕え、越後の弁と呼ばれたが、のちに後冷泉天皇の乳母(めのと)となり、三位典侍に栄進。
藤三位と呼ばれる。
のち太宰大弐高階成章と結婚し、大弐三位という称ができた。
家集に『藤三位集』。

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Author:クマコ
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