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2013/04
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百人一首 93♪
よ  なか  つね         なぎさ
世の中は 常にもがもな 渚こぐ
     をぶね  つなで
あまの小舟の 綱手かなしも (源実朝 みなもとのさねとも)



『 読み方 』
ヨノナカワ ツネニモガモナ ナギサコグ 
アマノオブネノ ツナデカナシモ

『 現代語訳 』
「この世の中は、永遠に変わらないでいてほしいものだなあ。波打ち際をこいでゆく漁師の小舟の、引き綱をあやつる景色が心にしみるよ。」

※常にもがもな・・・不変であればいいなあ。「常」は「無常」の反対で、永久不変であること。「もがも」は願望の終助詞。「な」は詠嘆の終助詞。
※渚・・・波打ち際。
※あま・・・漁師。
※綱手・・・舟の先につけて、舟を引いてゆくための引き綱。
※かなしも・・・「かなし」は大きく「愛し」と「悲し」にわかれるが、ここは両者が混然としている。おもしろく、悲しく、「身にしみて心ひかれる」のである。「も」は詠嘆の終助詞。

悲劇の人、源実朝が詠んだ歌。
鎌倉幕府の三代将軍であったこの人は、28歳で甥に暗殺されてこの世を去りました。
この歌は、実朝が22歳になるまでに詠んだ歌だと考えられます。

由比ガ浜か、七里ガ浜・・・・・。
実朝は鎌倉の海辺にいました。
征夷大将軍という冠は、まだ若い実朝には荷が重かったと思います。
権謀術数、権力争い、実朝にせまる危機、若さゆえの漠然とした感傷・・・・・。

世の中は常にもがもな(永遠を!)」

と実朝は思いました。
この世が永遠であって欲しいと彼が願ったのは、そんなものがこの世にはないことを知っていたからだと思います。
殺されるかもしれないという予感が、この若い詩人にはありました。

ふと見ると、年若な漁師たちが、舟の引き綱を引いて、渚を移動していきます。
猟師たちは白い歯を見せて笑っていました。
どこに行こうとしているのでしょうか。
それは分かりませんが、ともかくも、漁師たちが懸命に生きようとしているのは確かでした。
不意に、この若い詩人の中に、なんともいえないおかしみがこみあげてきました。

かなしも(やってますな!)」

人の世は、つまるところ、綱を引いて舟を渡す程度のいとなみに尽きるのかもしれません。
「自分も綱手を引こう。生きよう。」と、実朝は思いました。



『 作者について 』

源実朝 (1192~1219年)

頼朝の次男で、鎌倉幕府三代将軍。
11歳で将軍になるが、権力は母政子の実家北条氏が掌握していた。18歳から定家に師事し、和歌の指導を受ける。28歳で甥に暗殺されて、死去。
家集に『金塊和歌集』がある。

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